2010年01月20日
288~291 モーツァルト
288~297 モ-ツァルト ピアノ協奏曲
ピアノ協奏曲という分野でもコクマルガラスの「まず、いい全集をもとめなさい」という主張はおなじである。決して1枚ずつ探究していく楽しみを否定するものではないが、まずは全集で把握してしまったほうが楽だし全体の理解も早まる。マ-ラ-の交響曲などではそれがむずかしかったので1曲ずつ言及したが、モ-ツァルトのピアノ協奏曲全集についてはいいCDがある。ブレンデルがマリナ-/アカデミ-室内o.と録音したものがそれだ(フィリップス)。モ-ツァルトのピアノ協奏曲は2台ピアノや3台ピアノによるものや、初期の他の作曲家からの転用の曲を含めると27曲より多くなる。ブレンデルの盤でも初期の曲はヘブラ-が弾き、複数ピアノの曲のときはク-パ-が加わりといった具合にいろいろあるが、わたしは「ざっと20曲くらいでいいや」という説なので、そうした「いろいろあります」という部分には無頓着である。お許しを。
全集は他にいろいろなピアニストがやっているがブレンデルの次席にくるのはゲザ・アンダくらいで、それも後期の曲になるとさすがに苦しくなる。協奏曲であるからたとい小規模であってもオ-ケストラが重要なのは言うまでもない。その点アカデミ-室内o.はとてもいい伴奏をする。他にアシュケナ-ジの全集とペライアの全集にツケたフィルハ-モニアo.とイギリス室内o.もいいのだが、当のピアノがアシュケナ-ジやペライアでは食えない。ピリスやハスキル、ヘブラ-、クラウスといった女流のピアノは各論で挙げればよいだろう。
288 モ-ツァルト ピアノ協奏曲第9番変ホ長調「ジュノ-ム」 K.271
このへんの曲はハスキルがいい演奏を残している(ザッヒャ-/VSO。1954年。フィリップス)。このディスクは音もまあまあ良くとれているので推薦に値する。
289 モ-ツァルト ピアノ協奏曲第19番ヘ長調 K.459
この曲あたりでペライアの弾き振りをきいておこう。オ-ケストラは全集の項で述べたとおりイギリス室内o.である(1983年。ソニ-)。ペライアのピアノは技巧が弱いがこの曲ならどうにかカヴァ-できる。そんな中途半端なピアノなら厭だという方は無理してよそ見せずブレンデルの全集に立ち戻るといい。
290 モ-ツァルト ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
291 モ-ツァルト ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467
この2曲には両方を組み合わせた名盤がある。グルダのピアノ、アバド/VPOによる演奏(1974年。グラモフォン)だ。交響曲第40番、41番とおなじでアバドが旋律重視のすっきりした造形をやっていた頃の録音だ。グルダも透明感のあるタッチでアバドに呼応しており爽快である。ときどき「協奏曲第21番でグルダはスワロフスキ-/ウィ-ン国立歌劇場o.と装飾音符いっぱいの演奏も残している」という評論がなされるが、わたしはその盤(1963年。コロムビア)をきいてもあまり何も感じなかった。グルダの変化球を見たいのであれば「トルコ行進曲付き」のアマデオ盤をきいたほうが面白いと思う。