2010年01月02日

195~199 フォレ


195 フォレ ヴァオイリン・ソナタ第1番イ長調 Op.13

 まずは王道、フランコ-ベルギ-楽派の継承者グリュミオ-の演奏が素晴らしい。グリュミオ-は2度録音しているようだがハイデュと組んだ1962年盤、クロスリ-と組んだ1977年盤、いずれも傑出している(どちらもフィリップス)。フランクのヴァイオリン・ソナタとカップリングされることが多いが、グリュミオ-はフランクもうまいのでためらうことなくお薦めできる。往年の決定盤であるティボ-とコルト-のディスクも演奏そのものはいいが、1927年の録音だということを肝に銘じて聴くべし。


196 フォレ チェロ・ソナタ第1番ニ短調 Op.109

 ネタ本ではトルトゥリエの新旧両盤(1962年のユボ-とのエラ-ト盤、1974年のハイドシェックとのEMI盤)の評価がたかいが、どっちも買ってはいけない。トルトゥリエという人はチェロが達者とは言えず、腹芸みたいなものできかせる人だ。そのへんがフォレに合うという誤解を生んだようだが、どちらの盤も推薦に値しない。特にEMI盤のハイドシェックの悪乗りぶりは、ひどいの一語。
 ロデオンとコラ-ルの演奏がいい。若々しい感受性と華やぎがあってフォレにうってつけである。1977年。EMI。


197 フォレ 夜想曲(ノクテュルヌ)全曲

 194で述べたことの延長のような形でコラ-ルの全曲(1973年。EMI)とドワイヤンの全曲(1970~72年。エラ-ト)がある。それぞれの傾向も室内楽とまったく同じだ。わたしはコラ-ル派だが、ドワイヤンの演奏もいい。ハイドシェク? ああ、きらいですね。やかましくて。崩れてて。


198 フォレ レクィエム Op.48

 まずもってコルボ盤(1972年。エラ-ト)。CDが出始めた頃なかなかCD化しないので待ち遠しかったことを覚えている。コルボの合唱を振る能力はすごいものだ。すごいと言ってもオペラティックに大きな声を出すことではなく、各声部を透明感ゆたかに溶け合わせる能力のすごさである。静かで穏やかなフォレの再現はこうした指揮者にこそふさわしい。クリュイタンスの新旧両盤について言えば、旧盤(サントュスタシュo.1952年。EMI)は合唱、独唱ともに非力で、しかも録音がひどく悪い。新盤(パリ音楽院o.1962年。EMI)は表現がいささか大きすぎて、フィッシャ-=ディ-スカウの独唱も目立ちすぎだ。


199 フォレ 歌曲集

 いろいろな曲があるので、わたしのパタ-ンとしてまず全集をあげておいてその後で各論にはいることにする。アメリングとスゼ-によるフォ-レ歌曲全集(1970、73、74年。EMI。4枚組。ピアノはボ-ルドウィン)が素晴らしい。歌曲集なのでやはり対訳がほしいところで、国内盤がもっとやすくならないものかと思う。さまざまな1枚ものでは昔から「戦前の歌手の方が魅力的だった」と言われる。パンゼラ(Br)、ヴァラン(S)、クロワザ(Ms)といった歌手が1930年代に録音したディスク(EMI)がそれで、たしかに香り高い歌唱を伝えるものではあるがなんとも録音が古い。フランス歌曲には戦前からファンが多かったのだなあ。もうすこし新しいところではモラ-ヌ(Br)がいるが、エラ-トの悪い癖で日本盤がなかなか出ない。やはり結論としてEMIの4枚組がベストであろう。


ちょっと休憩。

 こうしてフォレについていろいろ書いてきてから市場のCDはどんなものかとインタ-ネットで探してみると、やはりフランスものは販売経路が細いようである。パンゼラやヴァランといった往年の歌手はおろかモラ-ヌもなかなか声がきけないようだ。これがヴァイオリンやピアノなら「他にも演奏家はいるさ」という切り換えもきくが、声楽になると問題が人間の声だけに誰にも「聴き分け」ができるということが関係してまことに諦めがつきにくくなり、しまいには「ひとふしだけでも」ということで大冊ものを歌手の一声だけのためにもとめる、という乱暴なことになりがちである。そういうことは無意味だからおよしなさい、とわたしが言ったってこのわたしがそういうCDの蒐集をしてきたのだから説得力ゼロである。
 そういうときは「友達」が力になるものだ。いわゆる「もの集めサ-クル」というやつだ。昨今はネット社会とやらで30年前とは比較にならずコレクタ-ズ・アイテムが入手できるが、トモダチというのはやはり馬鹿にできない。お前がそれを持っているなら俺はこれを探す、という調子で分散所有をすることでずいぶん楽になる。貸し借りをして聴くことで無駄がはぶけるわけだ。LP時代に「レコ-ドの貸借」というのはなかなか勇気がいったが、CDならば安心である。ともに音楽の楽しみをわかつ胞輩がいるのといないのとで人生の豊かさはだいぶ違ってくるものだ。友人を大切にしましょう。

  

Posted by コクマルガラス at 12:01Comments(0)TrackBack(0)
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