2010年02月19日
456~462 ストラヴィンスキー~チャイコフスキー
456 ストラヴィンスキ- バレエ「春の祭典」
決定的な演奏が存在する。ブ-レ-ズ/クリ-ヴランドo.(1969年。ソニ-)がそれだ。ブ-レ-ズはこの盤以前にもフランス国立放送so.を振ってこの曲を録音しているが1969年のクリ-ヴランドo.に匹敵するものではない。なにしろセルにしごきにしごかれて20年がかりでアメリカのトップ5に躍り出たオ-ケストラの最盛期であるから、この盤の完璧さにならぶのは容易ではない。音符どおりに弾くという点からいってもダイナミックスの幅のひろさからいっても、この盤をいったん聴いてしまった者にとってはあとの盤は「その他もろもろ」になってしまうほど徹底している。たとえば曲のいちばん最後の部分はアルペジオで終わるよう書かれているが、実際にそうきこえるのはわたしが知るかぎりブ-レ-ズ/クリ-ヴランドo.盤だけだ。
457 ストラヴィンスキ- バレエ「火の鳥」
この曲もやはりブ-レ-ズであろう。この曲についてはニュ-ヨ-クpo.との録音になる(1975年。ソニ-)。NYPというオ-ケストラには弱い指揮者をナメてかかる傾向がつよいが、ブ-レ-ズは負けてなんかいない。この時期のブ-レ-ズは意気軒昂な発言で有名であった。現代ものにめっぽう強い指揮をふるって、バルト-ク、ストラヴィンスキ-、ドビュッシ-、ラヴェルといった作曲家の難曲をバサバサと退治していたものだ。彼は1990年代に「2周目」という感じで上記の作曲家と、あとマ-ラ-を取り上げたが、すでに往年の力はなかった。
458 ストラヴィンスキ- バレエ「ペトル-シュカ」
この曲もブ-レ-ズ/NYPにしようかと思ったのだが、それだと全部になってしまうし「ペトル-シュカ」という曲については独特のペ-ソスが必要のように思う。そこでドラティ/デトロイトso.の盤をとる(1980年。ロンドン)。ロンドン-デッカの録音技術はこの頃がひとつのピ-クにあったと思う。
459 タルティ-ニ ヴァイオリン・ソナタ ト短調「悪魔のトリル」
この曲はやはり美音のヴァイオリニストでききたい。オリジナル楽器による演奏を重視しようとして学生時代にメルクス盤(1971年。アルヒ-フ)を購入したが、勢い込んでLP盤に針を落としてがっくりきた記憶がある。やはりグリュミオ-とカスタニョ-ネの盤だろう(1956年。フィリップス)。モノラルだが音質は良好である。
460 チャイコフスキ- 交響曲第4番ヘ短調
461 チャイコフスキ- 交響曲第5番ホ短調
462 チャイコフスキ- 交響曲第6番ロ短調「悲愴」
ことチャイコフスキ-については全集を挙げる必要はあるまい。1番から3番までの交響曲はどれも4番から6番の交響曲に従属するというか、後期交響曲の完成のためのスケッチと考えて問題ないからである。
カラヤンはこの3曲が殊に好きで、4回とか5回とか録音している。その4回とか5回というのはたぶん戦後まもなくの頃からはじまった盤歴であろうが、最初はフィルハ-モニアo.と録音し、次にベルリン・フィルと入れて最後がウィ-ン・フィルと、という順番になると思う。この順番はカラヤンの録音史を辿るとだいたいどんな曲でもその通りになっているので、いわばカラヤンの人生そのものと言い換えることもできる。
ベルリン・フィルに就任して10年余、ちっとも自分のところにチャイコフスキ-を録音してくれないEMIの要請に負けてか、1971年9月にカラヤンはBPOを振って後期の3曲をまとめて録音する。
このとき、運命の女神はことのほか帝王カラヤンに味方した。わたしはこれまでチャイコフスキ-の4、5、6番をどのくらいきいたろう。この3曲はいわば「初心者向け」の曲として扱われることが多い。よってこの項でも「幻想」「皇帝」「オルガン付き」と似たようなものだからまあカラヤンならどれでもいい、とでも書きとばしておきたいところなのだ。しかし嘘はつけない。わたしは20代と30代いっぱいをこの3曲に没頭して過ごしたのだ。CDも3曲で20枚以上になるのではなかろうか。そのうちの10枚くらいは、みんなカラヤンである。だからこの段落の最初のような大袈裟なことが書けるのだ。この3曲についてだけ書けばよいのなら、わたしは二流の評論家になれるような気がするのである。
カラヤン、ベルリン・フィル。1971年。EMI。国内盤もあるが、3曲をCD2枚組に収めるというすこし乱暴なことをしている外盤がやすい価格で出ている。
Posted by コクマルガラス at 13:19│Comments(80)│TrackBack(0)