2010年02月04日

343~350 プロコフィエフ


343 プロコフィエフ 交響曲第1番ニ長調「古典交響曲」

 この曲にあんまり裏打ちや奥行きをもとめても無駄骨、という気がする。さして長くない曲なので他の曲とカップリングされることが多い。バ-ンスタイン/NYPが1968年に録音した演奏がショスタコ-ヴィチの交響曲第5番(1959年。ソニ-)とカップリングされており、それが凄い名演なので挙げておく。いまのところ廉価盤らしいがありがたいことだ。


344 プロコフィエフ 交響曲第5番変ロ長調

 バ-ンスタイン/イスラエルpo.(1979年ライヴ。ソニ-)を挙げておく。イスラエル・フィルというオ-ケストラはあまりアンサンブルがよくないので、それが気になりそうな方にはカラヤン/BPO(1968年。グラモフォン)を。


345 プロコフィエフ 組曲「キ-ジェ中尉」

 アバド/CSO(1977年。グラモフォン)とセル/クリ-ヴランドo.(1969年。ソニ-)が拮抗する出来ばえ。スケ-ルではアバド盤がまさるが、オ-ケストラのコントロ-ルではセルが上。個人的にはセルに軍配を上げたい。


346 プロコフィエフ バレエ「ロメオとジュリエット」

 全曲なのか抜粋なのかが問題である。わたしは抜粋盤のほうを好むが、抜粋盤の演奏にも「モンタギュ-家とキャピュレット家」と「兵士の行進」を連結して演奏するスタイルと分けて演奏するスタイルがある。わたしは連結スタイルを好む。結論から言ってしまえばミトロプ-ロス/NYPの演奏(1957年。ソニ-)が学生時代から頭に刻みつけられてしまって離れないのである。他にもいろいろな演奏のディスクをきいたが、1957年当時のNYPの優秀なアンサンブルと硬質で冷たい音色による再現にまさる演奏に出会ったことはまだ、ない。


347 プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番ハ長調

 この曲も好きでいろいろなディスクを漁った。ピアノ協奏曲全集のかたちになってしまうがベロフ、マズア/ゲヴァントハウスo.の録音(1974年。EMI)が群を抜いて素晴らしかった。これと競合できる盤だと他にクライバ-ン、ヘンドル/CSOの盤があるのだが、こちらに注目された方には言っておかないといけないことがある。一般的に国内盤で出ているものはカップリングがラフマニノフのピアノ協奏曲第3番で、コンドラシン/シンフォニ-・オブ・ジ・エアの伴奏だ。このラフマニノフ協奏曲第3番はライヴ録音で、クライバ-ンがアメリカで凱旋公演を繰り返していた頃の記録なのだが、コンドラシンの指揮も聴衆も最悪の状態である。無神経きわまる指揮。最初から最後まで咳をしている女性。最後の和音が鳴りおわらぬうちに爆発する嬌声とバカ拍手。クライバ-ンを押し潰した「1960年代アメリカ」がここにある。わたしはこのCDをとても推薦するわけにいかない。クライバ-ンのプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番はもともとはシュ-マンのピアノ協奏曲とのカップリングで、そちらはライナ-/CSOの伴奏であった。外盤ならばその組み合わせできくことができるので、是非そちらをおもとめください。


348 プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調
            ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調

 まずもってパ-ルマン、ロジェストヴェンスキ-/BBCso.の演奏(1980年。EMI)がベストであろう。ソ連系の粗野な指揮はきらいだという方(わたしはこの曲については許せるが)にはミンツ、アバド/CSO(1983年。グラモフォン)がいいだろう。


349 プロコフィエフ ヴァイオリン・ソナタ第1番ヘ短調

 線の太いヴァイオリンの音か、細い音かでわかれる。わたし個人は線の太いギコギコした演奏の方が好きで、オイストラフとリヒテルによる1971年のライヴ録音(メロディア)を推薦する。線の細い鋭利な音をもとめるのであればクレ-メルとマイセンベルクの演奏(1974年。メロディア)だ。


350 プロコフィエフ ピアノ・ソナタ第7番変ロ長調「戦争ソナタ」

 この曲については決定盤が存在する。ポリ-ニの演奏がそれだ(1971年。グラモフォン)。ショパン・コンク-ルの優勝から10年、行方知れずになっていたポリ-ニが復活してきたのがこの盤だった(その名声はショパン:練習曲で確立されることになる)。最近では物分かりのいい老人になってしまったポリ-ニだが1970年代には剃刀のような切れ味のある、凄い人だったのだ。

  

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2010年02月03日

336~342 ムソルグスキー~ペルゴレージ


336 ムソルグスキ- 組曲「展覧会の絵」(管弦楽版)

 「総譜を完全に弾けるか」どうかで勝負のきまる曲だけに、実力のあるオ-ケストラをえらびたい。この曲の圧倒的なパワ-を存分に出せるオ-ケストラといえばフィラデルフィア管弦楽団とシカゴ交響楽団、クリ-ヴランド管弦楽団と、あとベルリン・フィルくらいだろう。この中で「展覧会の絵特産地」を誇るのがCSOで、ジュリ-ニが振った1976年盤(グラモフォン)、ショルティが振った1980年盤(ロンドン)のいずれもが凄い名演奏になっている。オ-マンディがフィラデルフィアo.を振った録音(1973年。RCA)は未聴だが、いい演奏だろうと想像せられる(オ-マンディはラフマニノフの協奏曲やムソルグスキ-になると実力を発揮する指揮者だ)。


337 ムソルグスキ- 組曲「展覧会の絵」(原曲ピアノ版)

 1960年代から1980年代にかけて、この曲となると必ず引き合いに出されるのが1951年のホロヴィッツ盤(RCA)と1958年のリヒテル盤(フォンタナ)であった。いずれもライヴ演奏のモノラル盤で、たしかに録音の古さを超えて放射されてくるオ-ラの強さは比類なきものだ。しかし、もう21世紀だ。最初に聴くのはもうすこしよい録音の盤にしたい。そこでわたしが推すのがワイセンベルク盤(1971年。EMI)だ。ワイセンベルクのパワフルな名技が全開になってきくものを圧倒する。ワイセンベルクにくらべたらアシュケナ-ジ(1982年。ロンドン)すらもいささか小さい気がする。


338 ニ-ルセン 交響曲第4番「不滅」

 北欧ものはカラヤン/BPOがうまい(1981年。グラモフォン)。「またカラヤンですか」と仰有る方にはラトル/バ-ミンガム市立so.による1984年の演奏(EMI)をお薦めする。この録音の頃のラトルはピ-クにあった。ヤナ-チェクやニ-ルセンを得意にしている若い指揮者を、なんでまたBPOは雇ったのであろうか。


339 オルフ カルミナ・ブラ-ナ

 この曲が「名曲」だって? と、いささか考えさせられる。まあストラヴィンスキ-の「春の祭典」みたいなもので、要点を押さえれば伝統の呪縛から解放されてイキのいい演奏ができる点では名曲かな、とは思う。以前から評判のたかいヨッフム/ベルリン・ドイツ・オペラo.による再現を(1967年。グラモフォン)。ム-ティ/PO(1979年。EMI)やレヴァイン/CSO(1984年。グラモフォン)も同じレヴェルだと思う。


340 パガニ-ニ ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調

 これで決まり、という盤はいまのところ無いように思う。庄司沙矢香、メ-タ/イスラエル・フィルの録音(2000年。グラモフォン)やヒラリ-・ハ-ン、大植英次/スウェ-デン放送so.の録音(2005年。グラモフォン)があるが、随所随所にムラがあってスタンダ-ドとして推すには弱い。結局のところアッカルド、デュトワ/LPOによる1975年の録音(グラモフォン)ということになる。


341 パガニ-ニ カプリ-ス

 これも選ぶのが意外と難しい。個人的には「モ-ツァルトをひくようにパガニ-ニをひきたいと思った」と述べているフランク・ペ-タ-・ツィンマ-マンの録音(1984年~85年。EMI)が好きだ。パガニ-ニの曲をジプシ-・ヴァイオリン風に弾いたディスクをお探しであればパ-ルマン(1972年。EMI)かミンツ(1981年。グラモフォン)がいいだろう。


342 ペルゴレ-ジ スタ-バト・マ-テル

 アバド/LSO団員の1983年の盤(グラモフォン)はたしかレコ-ド・アカデミ-賞を受賞したのではなかったか。記憶ちがいであったらお詫びするが、なにはともあれ日本のクラシック・ファンはアバド盤によってこの曲を再認識したのだ。グラチス/ナポリ・スカルラッティo.(1972年。アルヒ-フ)も悪くはないが、結局のところ二番手の盤だという評価からはのがれられない。

  

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2010年02月02日

331~335 モーツァルト


331 モ-ツァルト 歌劇「フィガロの結婚」全曲 K.486

 ベ-ム/ベルリン・ドイツ・オペラo.の録音が良い(1968年。グラモフォン)。ときどき「同じ組み合わせで1963年に来日したときのベ-ムはもっと良かった」ということを言う評論家がいて、わたしはそのライヴ録音が出たときにとびついたが、録音状態があまりよくなくてさして感激もしなかった。


332 モ-ツァルト 歌劇「魔笛」全曲 K.620

 何度きいても「おかしな構成の曲だ」と思う。まあそれはともかくこの曲のハイライトが「夜の女王のアリア」にあることは事実で、それを比較するためだけに何セットか買ったものだ。指揮と歌手が揃ったショルティ/VPOの盤(1969年。デッカ)を推薦する。あとひとつ、サヴァリッシュ/バイエルン国立歌劇場の録音(1973年。EMI)もなかなかいい出来だった。


333 モ-ツァルト コンサ-ト・アリア集

 モ-ツァルトが高音自慢のソプラノに目がなかったことは有名だ。バスやテノ-ルのアリアも存在するが、ソプラノのための楽譜に圧倒的に力が注がれていることを考えるとコンサ-ト・アリア集はソプラノのためのものでよいという気がする。
 グルベロ-ヴァがハ-ガ-/ザルツブルク・モ-ツァルテウムo.と入れた1枚(1979~82年。グラモフォン)が素晴らしい。素晴らしいと言うよりは「凄い」という言葉のほうがぴったりくる。
 あと、コンサ-ト・アリアでなくオペラ・アリアを録音したディスクにシュワルツコップ(EMI)とベルガンサ(ロンドン)の名盤があることは吉田秀和氏の著作にもある通りだ。


334 モ-ツァルト ミサ曲ハ長調「戴冠式ミサ」 K.317

 カラヤンの盤もあるが、音楽のはこびに対して無理がなく、誠実に指揮をしているという点でク-ベリック/バイエルン放送so.をとる(1973年。グラモフォン)。カップリング曲も「雀のミサ」「エクスルタ-テ・ユビラ-テ」「アヴェ・ヴェルム・コルプス」となっていて徳用だ。独唱者もすぐれている。


335 モ-ツァルト レクィエム ニ短調 K.626

 なんといってもベ-ム/VPOだ(1971年。グラモフォン)。冒頭の旋律をきいたときに「一体こんなにおそいテンポで保てるのだろうか」と猜疑的になってしまうききても多いだろう。それを保持してしまうウィ-ン国立歌劇場合唱団の低音男声陣に拍手。この低音男声陣はマ-ラ-の交響曲第2番でもメ-タの棒の下で朗々とD音を出しており、わたしはVPOはあまり好まないが、ウィ-ン国立歌劇場合唱団についてはファンなのである。

  

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2010年02月01日

315~330 モーツァルト


315 モ-ツァルト ヴァイオリン・ソナタ第34番変ロ長調 K.378

 モ-ツァルトのヴァイオリン・ソナタといえばハスキルとグリュミオ-の演奏が評価がたかい。しかし1958年ごろの初期ステレオということもあって、音質はあまりよくない。グリュミオ-は後年他のピアニスト(クリ-ンやアラウ)と録音しており、そちらの方が音がいいしグリュミオ-のヴァイオリンにも自発性がある。廃盤などの問題もあろうからここでは「どちらも良い演奏です」と書いておこう。他のヴァイオリニストではゴ-ルドベルクがルプ-と組んでいい演奏をしている(1974年。ロンドン)。


316 モ-ツァルト ピアノ・ソナタ全集

 「まずは全集を」というコクマルガラスの主張から選ぶとワルタ-・クリ-ンの演奏がすぐれている。もとはフィリップスと思われるがVoxBoxから上下各2枚組、つまりCD4枚に収められている(1964年)。モ-ツァルトのピアノ・ソナタ全集というのは意外と選びにくいもので、わたしも30代のときは「安心してきける全集」探しに苦労させられた。この盤に出会ってやっと溜飲が下がったときの晴れやかな気持ちはいまでもはっきり覚えている。クリ-ンのピアノはまったくの正攻法で、音もカチッとした陶磁器を思わせるものだ。その点、セル/クリ-ヴランドo.のモ-ツァルト交響曲などの演奏と類似するところがあるように思う。ダイナミックスもしっかりとられていて、いわゆる「箱庭的演奏」には、ならない。モ-ツァルトのピアノ・ソナタにはしばしば女流が登場するが、そのあたりの問題(スケ-ルが小さくまとまってしまう)がわたしにとっては大きかった。
 わたしが底本にしている音楽之友社『名曲名盤500』では317番から328番にわたってモ-ツァルトのピアノ・ソナタ、幻想曲、ロンド、変奏曲の名盤が選ばれている。それを追って順にわたしの好みの盤を挙げていこうかとも思ったが、結局はクリ-ンの演奏に戻ることになる傾向がつよいのでここではとばすことにする。『コクマルガラスの名曲名盤500』がとりあえず500番まで行って、そのあとまた各曲の「落ち穂拾い」に戻ったときの楽しみとしてモ-ツァルトのピアノ・ソナタはとっておくことにする。


329 モ-ツァルト 歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」全曲 K.588

 まずはベ-ム/フィルハ-モニアo.の録音を、とる(1962年。EMI)。EMIのプロデュ-サ-、ウォルタ-・レッグはこの録音について、この先10年(と言ったように記憶するが、もしかしたらもっとだったかもしれない)はこの録音を超えるものは出ないだろうと述べたが、その予想は謙遜に過ぎた。40年以上過ぎたいまでもまだ凌駕されていない。主役ふたりのシュワルツコップとル-トヴィヒの歌唱も傑出している。


330 モ-ツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」全曲 K.527

 思えばこのオペラも全曲盤をいくつか買ったものだ。なかで一番「デモ-ニッシュなドン・ジョヴァンニ」をきかせてくれたのはクレンペラ-/ニュ-・フィルハ-モニアo.でうたっているニコライ・ギャウロフであった(1966年。EMI)。騎士長のフランツ・クラスとのかけあいの部分はまさしく「低音の魅力」であった。
 しかしこの選び方はすこし私的にすぎるかもしれない(クレンペラ-盤は曲全体のバランスがいささか重い)ので、カラヤン/VPOの盤(1985年。グラモフォン)を挙げておく。口うるさくて強引な指揮者がオペラを振ったときだけは真面目にやるオ-ケストラであるし、真面目にやれば実力はあることを示す盤である。

  

Posted by コクマルガラス at 12:29Comments(0)TrackBack(0)
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