2010年02月01日
315~330 モーツァルト
315 モ-ツァルト ヴァイオリン・ソナタ第34番変ロ長調 K.378
モ-ツァルトのヴァイオリン・ソナタといえばハスキルとグリュミオ-の演奏が評価がたかい。しかし1958年ごろの初期ステレオということもあって、音質はあまりよくない。グリュミオ-は後年他のピアニスト(クリ-ンやアラウ)と録音しており、そちらの方が音がいいしグリュミオ-のヴァイオリンにも自発性がある。廃盤などの問題もあろうからここでは「どちらも良い演奏です」と書いておこう。他のヴァイオリニストではゴ-ルドベルクがルプ-と組んでいい演奏をしている(1974年。ロンドン)。
316 モ-ツァルト ピアノ・ソナタ全集
「まずは全集を」というコクマルガラスの主張から選ぶとワルタ-・クリ-ンの演奏がすぐれている。もとはフィリップスと思われるがVoxBoxから上下各2枚組、つまりCD4枚に収められている(1964年)。モ-ツァルトのピアノ・ソナタ全集というのは意外と選びにくいもので、わたしも30代のときは「安心してきける全集」探しに苦労させられた。この盤に出会ってやっと溜飲が下がったときの晴れやかな気持ちはいまでもはっきり覚えている。クリ-ンのピアノはまったくの正攻法で、音もカチッとした陶磁器を思わせるものだ。その点、セル/クリ-ヴランドo.のモ-ツァルト交響曲などの演奏と類似するところがあるように思う。ダイナミックスもしっかりとられていて、いわゆる「箱庭的演奏」には、ならない。モ-ツァルトのピアノ・ソナタにはしばしば女流が登場するが、そのあたりの問題(スケ-ルが小さくまとまってしまう)がわたしにとっては大きかった。
わたしが底本にしている音楽之友社『名曲名盤500』では317番から328番にわたってモ-ツァルトのピアノ・ソナタ、幻想曲、ロンド、変奏曲の名盤が選ばれている。それを追って順にわたしの好みの盤を挙げていこうかとも思ったが、結局はクリ-ンの演奏に戻ることになる傾向がつよいのでここではとばすことにする。『コクマルガラスの名曲名盤500』がとりあえず500番まで行って、そのあとまた各曲の「落ち穂拾い」に戻ったときの楽しみとしてモ-ツァルトのピアノ・ソナタはとっておくことにする。
329 モ-ツァルト 歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」全曲 K.588
まずはベ-ム/フィルハ-モニアo.の録音を、とる(1962年。EMI)。EMIのプロデュ-サ-、ウォルタ-・レッグはこの録音について、この先10年(と言ったように記憶するが、もしかしたらもっとだったかもしれない)はこの録音を超えるものは出ないだろうと述べたが、その予想は謙遜に過ぎた。40年以上過ぎたいまでもまだ凌駕されていない。主役ふたりのシュワルツコップとル-トヴィヒの歌唱も傑出している。
330 モ-ツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」全曲 K.527
思えばこのオペラも全曲盤をいくつか買ったものだ。なかで一番「デモ-ニッシュなドン・ジョヴァンニ」をきかせてくれたのはクレンペラ-/ニュ-・フィルハ-モニアo.でうたっているニコライ・ギャウロフであった(1966年。EMI)。騎士長のフランツ・クラスとのかけあいの部分はまさしく「低音の魅力」であった。
しかしこの選び方はすこし私的にすぎるかもしれない(クレンペラ-盤は曲全体のバランスがいささか重い)ので、カラヤン/VPOの盤(1985年。グラモフォン)を挙げておく。口うるさくて強引な指揮者がオペラを振ったときだけは真面目にやるオ-ケストラであるし、真面目にやれば実力はあることを示す盤である。