2009年12月13日

036~047  バルトーク~ベートーヴェン


036 バルト-ク 弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽 Sz.106

 前の項で挙げたようにライナ-/CSOの演奏を推す。「管弦楽のための協奏曲」と一緒になってCD1枚であるから徳用だ(まあもっとも、この2曲はたいていカップリングされるけれど)。いまは老齢になって昔の栄光でなんとかやっているブ-レ-ズも、この2曲を録音した頃(1972年と67年)は実力と勢いがあった。しかしソニ-クラシカルはたぶんいまでもこの2曲を別売にしているだろうから推薦できない。


037 バルト-ク ピアノ協奏曲第3番 Sz.119

 これは決定的な盤が存在する。ゲザ・アンダがフリッチャイ/ベルリン放送so.と組んで1960年に録音したものがそれだ。わたしがもとめたときは2枚組でバルト-クのピアノ協奏曲1、2、3番とヴァイオリン協奏曲第2番(ヴァイオリンはティボ-ル・ヴァルガ)を収録していたが、いまなら単発でもとめられるのではなかろうか。


038 バルト-ク ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112

 前の項で挙げたティボ-ル・ヴァルガとフリッチャイの組み合わせもよかったが、個人的に「ヴィオラ協奏曲とのカップリングですぐれたものを」という思い入れがある。よってピンカス・ズッカ-マンがヴァイオリンとヴィオラを弾いてレナ-ド・スラットキンがセントルイス交響楽団を振ったもの(RCA)を推薦する。


039 バルト-ク 弦楽四重奏曲(全曲)
               Sz40、67、85、91、102、114

 ふたつ傑出した演奏がある。ひとつは1963年のジュリア-ドSQ(ジュリア-ドの綴りは Juilliard である)によるもの。ジュリア-ドSQは三回録音しているが、この1963年の二度目の録音はその演奏によって多くの人々がバルト-クの弦楽四重奏曲を「発見」したという点で、もはや記念碑的と言うべきである。
 もうひとつは1984年から86年にかけて録音されたアルバン・ベルクSQによるもの。近年惜しまれつつ解散した団体だが、その「美しい歌」によって、さまざまな曲目の決定盤を生み出したことは音楽界にとって大きな貢献であった。


040 バルト-ク 2台のピアノと打楽器のためのソナタ Sz.110

 これはエラ-トのラベック姉妹による演奏が、楽しい。ジャズ評論家をして「ばんばんにスウィングしている」と言わしめた「2台のピアノのための7つの小品(ミクロコスモスより)」とカップリングされており、晦渋な現代音楽という地点から軽々と飛翔するさまは見事である。


041 バルト-ク 歌劇「青ひげ公の城」全曲 Op.11、Sz.48

 わたしにとって「バルト-ク開眼」を経験させてくれた、忘れがたい曲目である。それまでなんとも難解な音列にすぎなかった現代音楽が、いちどきにパッと視野がひらけるように提示されたときの驚きは、いまでも記憶にあたらしい。そのときのディスクはサヴァリッシュ/バイエルン国立o.で、タイトルロ-ルを歌ったのはフィッシャ-=ディ-スカウであった。
 このディスクのフィッシャ-=ディ-スカウに「彼の声質では重さや暗さが足りないのではないか」という感覚を持たれる方にはネステレンコをお薦めする。フェレンチ-ク指揮のハンガリ-国立o.で1981年の録音。フンガロトン原盤。


042 ベ-ト-ヴェン 交響曲全集

 この文章を読んでおられる方々の多くは、5枚組とか6枚組とかいった大冊ものを惜しげもなくもとめる方ではないだろうと思う。しかしベ-ト-ヴェンの交響曲のみならず、いろいろな「セットもの」にはそれなりの利点がある。1枚あたりの単価が安くなるということがひとつ、そしてもうひとつは「全体を俯瞰するにあたって有利」ということだ。ここでは「セットでも単発でももとめられるもの」ということを主眼にしてショルティ/CSOの1970年代の1回目の全集(2回目は1980年代後半)をあげておく。
 あと推薦できる全集としてカラヤン/BPOの1回目(1960年代)のものと、セル/クリ-ヴランドo.のものがあるが、わたしの選択を信じてくださるのであればやはりショルティ盤がいいと思う。爽快で力強い表現と、オ-ケストラのとびきりの能力がたのしめる。
 わたしの手元の『名曲名盤500』では1位と2位がバ-ンスタイン/VPOとフルトヴェングラ-/VPO他になっているが、これはどちらも「買うべからず」の全集であると言い切れる。


043 ベ-ト-ヴェン 交響曲第1番ハ長調 Op.21

044 ベ-ト-ヴェン 交響曲第2番ニ長調 Op.36

 この2曲はLPの時代は単発ものだと1枚に収録されることの多い曲だった。CD時代にはそうした慣行も崩れてゆくのかもしれないが。セル/クリ-ヴランドo.の演奏とワルタ-/コロンビアso.の演奏をあげておく。セルは交響曲第8番の演奏が卓越しているから後にも登場するが、ワルタ-はこの曲だけになりそうなので芸風を知るために買ってみるのもいいかもしれない。


045 ベ-ト-ヴェン 交響曲第3番変ホ長調「英雄」 Op.55

 この曲についてはフルトヴェングラ-/VPO(1952)のEMI盤が昔から高く評価されている。わたしも謙虚に50回くらいはきいたのだが、録音の悪さに辟易せずに最後まできけたためしがない。30年くらい前はトスカニ-ニ盤を持ち上げる批評家もたくさんいたが、どうやら絶滅したらしい(わたしはトスカニ-ニのディスクで好きな演奏のものがひとつもないと断言できる。いったいあの癇癪持ちの棒で、しかも録音がカチカチのディスクのどこが良いのだろうか)。
 まあ基本的にはショルティ/CSOであろう。それだと全集の選択と重なるという観点からほかを選ぶとジュリ-ニ/LAPO(1978)とかベ-ム/BPO(1961)だろうか。同じショルティが1959年にVPOを振ったものがあって、吉田秀和氏はそれと前述のベ-ム/BPOの演奏を『世界の指揮者』の「ショルティ」の項で比較させている。そう、そういう点からもベ-ム/BPO(1961)が、いいだろう。


046 ベ-ト-ヴェン 交響曲第4番変ロ長調 Op.60

 この曲は案外名盤に恵まれていない。クライバ-/バイエルン国立o.はどうかと言われれば、いいですけど・・と言う他ない(わたしはいわゆる「クライバ-・ファン」には属さない)。とりあえずベ-ム/VPO(1972)を選んでおく。カラヤン/BPOの2度目の録音(1976~77)も美しい。


047 ベ-ト-ヴェン 交響曲第5番ハ短調「運命」 Op.67

 この曲にはもう「運命」という副題がつかないことが多くなったが、それはともかくベ-ト-ヴェンの交響曲のなかでトップクラスの人気を誇る曲だ。クライバ-/VPOの演奏が交響曲第7番とカップリングされているので、まずは選ぼう。フルトヴェングラ-/BPOの1947年5月27日録音のグラモフォン盤も「奔流のような」と形容できる内容を持っている。ただし録音はぎりぎり60点というところ。もうひとつ、これはすこし好事家むけになるがクレンペラ-/VPOの盤がある(1968ライヴ)。同じ1968年の「未完成」とカップリングされているが、吉田秀和氏が著書のなかでクレンペラ-について書いたとき、ウィ-ン滞在中にラジオできいて「あとにもさきにもあんなすごい拡がりをもった「運命」はきいたことがない」と思ったという物件だ。「未完成」の方も演奏終了まぎわにクレンペラ-が「シェ-ン(美しい)」と呟く声が収録されているといういわくつきの盤なのでどこかで見かけたらもとめて間違いない。


ちょっと休憩。

 ここですこし「蒐集」ということについて書いておこう。さきほどベ-ト-ヴェンの交響曲第5番でもちょっと入手が難しいかもしれない盤について書いた。わたしがはっきり申し上げておきたいのは、そうした珍しい盤を「とにもかくにも集める」という人間には絶対に「なってはいけません」ということだ。
 そうした希少盤ばかり集める人間はビョ-キである。クラシックにもジャズにも、ロックンロ-ルの世界にも「コレクタ-」という人種が存在して法外な値段で取り引きをおこなっている。
 どの時代にも「○○のナニナニ」みたいな名称を奉られた「コレクタ-ズ・アイテム」があって、LP1枚やCD1枚がとんでもない値段になっている。わたしが生まれた頃、LP1枚が10万円というのがあった。東大卒の初任給が1万円くらいの時代である。 いま、そのLPとおなじ内容のCDが復刻されて2千円ぐらいの値段で売られている。あの時代そのLPを死ぬ思いでもとめた人間は何のために何をやったか。その当時安価でもとめられる同じ曲のほかのLPではなぜ、いけなかったか。
 音楽を愛する友たちよ。「蒐集家」になっては、いけません。

  

Posted by コクマルガラス at 10:56Comments(0)TrackBack(0)
QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。 解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
コクマルガラス