2009年12月14日

048~059  ベートーヴェン


048 ベ-ト-ヴェン 交響曲第6番ヘ長調「田園」 Op.68

 ベ-ト-ヴェンの交響曲のなかで唯一の標題音楽。何度全集をきいてもこの曲だけが異色だという感はまぬがれない。まず推薦できるのがベ-ム/VPO(1971)。録音がよくとれているし、ウィ-ン・フィルもベ-ムが指揮者だと真面目にやっている。ほかにワルタ-/コロンビアso.の演奏もあるが、どうせワルタ-に傾倒するなら1937年のワルタ-/VPOの再現も美しい。ただし録音は当然、よくない。ウィ-ン・フィルが戦前は立派なオ-ケストラであったことがわかる。ワルタ-/VPOの戦前の録音についてはのちのちマ-ラ-のディスク選びをするときに出てくるかもしれないから、「どうしても」という感じに執着する必要は、ない。


049 ベ-ト-ヴェン 交響曲第7番イ長調 Op.92

 交響曲第5番の項でクライバ-/VPOをあげた。同じディスクにカップリングされているのがこの曲だから敢えてほかの盤を選ぶこともあるまい。


050 ベ-ト-ヴェン 交響曲第8番ヘ長調 Op.93

 この曲はセル/クリ-ヴランドo.がいい。もしセルが好きになれない、という方がおられたのならカラヤン/BPOの2回目の録音(1976、77)だろう。


051 ベ-ト-ヴェン 交響曲第9番ニ短調「合唱」 Op.125

 第一に推すのがベ-ム/VPO(1970)の演奏。テノ-ルがジェス・ト-マス、バスがカ-ル・リッダ-ブッシュ、合唱がウィ-ン国立歌劇場合唱団と揃って重量級の演奏をきかせる。伝説的になったフルトヴェングラ-/バイロイト祝祭o.の録音(1951ライヴ)は2巡目でよい。テノ-ルとバスに注目するのならラインスドルフ盤でプラシド・ドミンゴとシェリル・ミルンズが共演したのがある。なかなかすぐれた演奏だったと記憶する(ラインスドルフという指揮者は一流の仕事をする人であった)。


052 ベ-ト-ヴェン 序曲集(選集あるいは全集)

 この曲目ではセル/クリ-ヴランドo.の再現を第一に推す。「レオノ-レ序曲 第3番」での畳みかけなど、凄い迫力であった。わたしは外盤で入手したが、手に入りにくければ同等にすぐれたカラヤン/BPOによる録音を。


053 ベ-ト-ヴェン ピアノ協奏曲第1番ハ長調 Op.15

054 ベ-ト-ヴェン ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 Op.19

055 ベ-ト-ヴェン ピアノ協奏曲第3番ハ短調 Op.37

056 ベ-ト-ヴェン ピアノ協奏曲第4番ト長調 Op.58

057 ベ-ト-ヴェン ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」 Op.73

 これも全集があるならば(わたしは1枚ずつもとめて3枚で揃ったが)グルダのピアノでホルスト・シュタイン指揮ウィ-ン・フィルの演奏がよい。各曲についてそれぞれの名演が存在するが、そのひとつひとつをグルダ盤と比較してみると結局はグルダ盤にひかれる、ということになる。あえて挙げろと言われればブレンデルがレヴァイン/CSOと組んだものになるが、わたしには響きがちょっと厚ぼったいように思われる。


058 ベ-ト-ヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61

 この曲には名演がふたつある。録音順に挙げるとまずオイストイラフがクリュイタンス/フランス国立放送o.と組んだもの(EMI盤)。もうひとつはパ-ルマンがジュリ-ニ/フィルハ-モニアo.と組んだもの(EMI盤)である。クライスラ-がレオ・ブレッヒ/ベルリン国立歌劇場o.と組んだ1926年の録音を褒める人がいるけれど、そういう「雑音の彼方から響いてくる」といった録音はたとえば1930年前後の声楽家の吹き込みをきくときだけで充分だと思う。スタジオ・ジブリの「火垂るの墓」で使われていた「埴生の宿( Home, sweet home )」の歌唱がそのころの録音で歌手がアメリタ・ガリ=クルチであった、と言えば雰囲気はわかっていただけようか。


059 ベ-ト-ヴェン 七重奏曲変ホ長調 Op.20

 ベルリン・フィル八重奏団による1972年の録音(フィリップス)。ここでお断りしておくが、わたしはウィ-ン・フィルよりベルリン・フィルをはるかに高く評価する。ベルリン・フィルがとびきりの職人集団だとすれば、ウィ-ン・フィルは一流の芸者集団である。ウィ-ン・フィルのみの得意演目があるとすれば、まあラデツキ-行進曲ぐらいではなかろうか。のちのちたとえば弦楽四重奏曲の名演でバリリSQ(ウィ-ン・フィルの奏者集団)をあげたりすることもあるからなにからなにまでとは言えないが、そういった理由で「ウィ-ン風室内楽」といった趣味は遠ざけることになる。この曲でたとえばウィ-ン・フィル室内アンサンブル(1975年。グラモフォン)を挙げない理由はそれである。



Posted by コクマルガラス at 14:38│Comments(32)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
昨日は丁寧なご回答ありがとうございました。
さて、今日はベートーヴェンの「第九」が入ってますね。やっぱり年末ですから・・・などという理由でこの曲が取り上げられるのではないことはわかりきったことですが。
この曲、アマチュア合唱団がよく歌いますが、とてつもない難曲です。そして、要するに第4楽章をどのように演奏するかでその価値は決まってしまいます。合唱ももちろんですが、ソリストの歌いっぷり、コンビネーションも含めて、満足のいく演奏にはなかなかお目にかかりません。
多分コクマルガラスさんとは大きく意見が異なるでしょうが、私が比較的気に入ってるのはバーンスタインがVPOを振った79年盤。これはいかにもバーンスタインの演奏なのですが、ソリストに穴がない。それから一時話題を呼んだアバド=BPO盤。演奏解釈には異論もありますが、やはりスウェーデン放送合唱団のすばらしさは抜きんでています。彼等を引っ張り出したというだけで、アバドに一票投じておきたくなってしまうのです。
Posted by ばく at 2009年12月14日 16:22
 そうですか、バーンスタイン/VPOの演奏がお好きですか。わたしとしては同じバーンスタインの演奏ならば1989年12月25日に「ベルリンの壁崩壊」を記念していろいろなオーケストラを混成させて行った演奏が好きです(ドイツ・グラモフォン)。バスを歌っているヤン=ヘンドリク・ロータリングの重量感のある声が素晴らしいと思いますし、こういう「祝典の場」になるとバーンスタインの棒は冴えますね。
 アバド/BPOの盤におけるスウェーデン放送合唱団の素晴らしさについてはまったく同感です。この「まるでポリフォニーみたいに美しくきこえる〈合唱〉」というものに論及した批評がないのは不思議なことですね。このことはいずれモーツァルトの「レクイエム」であるとかヴェルディの「聖歌四篇」などのディスク選びで語ることになるでしょう。
Posted by コクマルガラスコクマルガラス at 2009年12月14日 20:26
 

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